西田 銀次
僕は鹿児島大学大学院を修了後、職人である大工として毎日汗を流しながら楽しく働いています。鹿児島大学で学べたからこそ、大学院を出てから大工になるという、ある意味勇気のいる人生の選択ができたと思っています。
みなさん言われていますが、建築には法律を犯す、構造的に成り立たないなどの絶対的な不正解はあっても本当に確たる答えはありません。敷地条件やお施主様の要望にどう応えるかは、設計士、現場監督、さらには大工と、その人その人によってそれぞれ違います。だからこそ、克服すべき課題に対して多方面からアプローチできる柔軟性と引き出しの多さがあれば解決への糸口がつかみやすく、またより良い結果に結びつきやすいと思っています。
その点、鹿児島は引き出しの数を増やせる宝庫でした。西郷隆盛をはじめとした歴史、黒豚や地鶏、海産物や芋焼酎などの飲食文化、霧島や屋久島などの大自然や離島、温暖な気候ゆえの温かい地元の人々、そして設計課題の徹夜明けに友達と入る温泉など、価値観の幅を広げ、人生を豊かにしてくれる宝庫です。それと鹿児島大学には1年のうちに長期休暇が4ヶ月もあります。その4ヶ月をどう使うかは自分次第ですが、是非あなたの興味のあることや時間のかかる挑戦など、大学生のうちにしかできないことに使ってほしいと思っています。僕は全鹿大生の誰よりも国内外の旅行にバックパック一つで行きました。
また大学には国内外からたくさんの学生が集います。できるだけ多くの人と交流をして、たくさんの考え方や文化に触れていく中で、自分の中で大事にしたいと思う考え方が見えてくると思います。自分の中でブレない芯をしっかり持ちつつも、人の意見にも「そういう考えもあるよなー」と許容出来る柔軟な考えを持つことができれば、きっと鹿児島大学での学生生活は楽しいものになると思います。
これからあなたは今までにないくらいのたくさんの選択を自分自身でしながら生きていくことになります。その選択をするときにも、鹿児島大学で学んだこと、身につけた幅広い価値観は、建築においてだけでなく、先の見えない人生の中の道標になってくれるはずです。僕が今人生の選択をしていくうえで考え方の軸になっているのが「鹿児島での生活」であることは間違いありません。大げさに聞こえるかもしれませんが、大学で学ぶ場所は第二の故郷になります。少なくとも僕にとってはそうなりました。何を学ぶかももちろん大事ですが、進路選択のときにあまり気にすることのない「どこで」学ぶかも一度考えてみてください。そしてあなたも誰のものでもないあなたの意志で選択し、鹿児島という豊かな土地で建築を、そしてこれからの人生の糧を学びましょう!